源泉徴収事務
収入と所得の違い
今回は「収入」と「所得」の違いについてのミニコラムになります。
結論からお伝えしますと、収入から経費を引いたものが所得になります。収入-経費=所得です。
所得の種類によって、その算出方法が違ってきますので、サラリーマン、個人事業主、年金所得者に分けて説明します。
サラリーマンなどの給与所得者の場合には、
・収入・・・源泉徴収票の「支払金額欄」になります。毎月の給与明細ですと、本給、手当の合計でして、交通費は除かれます。源泉所得税、住民税、社会保険等の控除が引かれる前の金額です。手取り額ではありません。賞与がある場合には、賞与の総支給金額も含まれます。
・経費・・・サラリーマンの場合には、原則的には、領収書をもとに経費を計算するのではなく、給与所得控除というものを差し引きます。
・所得・・・収入から経費を引いたものとなります。源泉徴収票の「給与所得控除後の金額」になります。
具体的には、年収300万円のサラリーマンの場合には、給与所得控除が98万円となりますので、202万円が給与所得なります。
事業所得をしている個人事業主の場合には、
・収入・・・売上、持続化給付金・家賃支援給付金などの雑収入
・経費・・・仕入、人件費などの必要経費
・所得・・・収入-経費で算出した金額となります。
年金所得者の場合には、
・収入・・・公的年金等の収入金額。源泉所得税、住民税、介護保険料などが引かれている場合には、引かれる前の金額です。
・経費・・・公的年金等控除額。給与所得者と同様に領収書等の金額を経費にするのではなく、一定の計算式で経費を計算します。
・所得・・・収入-経費
所得の種類により、所得の出し方が違っているのがお分かりいただけたかと思います。
そうすると、収入がある場合には、必ず収入>所得になるかといえば、そういうわけでもなく、利子所得は、利子収入=利子所得なります。経費として認められるものがないからです。
(2020年12月2日)
年末調整で控除できない所得控除
年末調整の季節となり、私も自分の事務所の年末調整を今日行っていました。給与事務の担当者は、なぜ会社がこんな仕事をやらなければならないのか、これは従業員の納税なわけだから、従業員と所得税を徴収する国の仕事なのではないか、そう思う方もいるはずです。私も事業主の立場になり、そう思うようになりました。とくに、生命保険料の控除証明書が複数あり、集計するのに時間を要するとなぜ事業主の私がこんなことをしているのだろうかと思いながらやっています。もちろん、顧問先様の年末調整は私の仕事ですので、前向きに取り組んでいます。しかし、顧問先の方から情報を頂かないと「正しい年末調整」はできませんので、扶養の情報(今年改正のあった「ひとり親」に該当するかなど)などはしっかりと申告書に記載していただくようお願いしています。
今回のミニコラムですが、年末調整で控除できない所得控除になります。答えからお伝えしますと、「雑損控除」「医療費控除」「寄付金控除」は年末調整では控除が受けられません。これらは、さすがに会社の給与計算担当者にやらせてしまっては負担が大きすぎるだろうということで、年末調整ではできないことになっていて、従業員さんが確定申告することで控除が受けられます。まず、雑損控除ですが、こちらは災害や盗難、横領があった場合には、控除が受けられものです。2011年の東日本大震災の際には、横浜近辺でも被害がありましたので、私も顧問先様の確定申告をさせていただきましたが、自宅の屋根の修繕を行った場合などがこれに該当します。それから、「医療費控除」については、場合によっては領収書の枚数がかなり多くなるので年末調整では受けずに確定申告してもらうことになっています。「寄付金控除」についても確定申告することになっています。但し、ふるさと納税をした場合のワンストップ特例制度を使った場合には、確定申告不要となっておりますので、年末調整も不要ということになっています。
所得控除ではなく、税額控除になりますが、「住宅ローン控除」も借入初年度(1年目)については、従業員さんが確定申告することになっています。さすがに、会社の給与計算担当者が住宅の契約書や謄本などを見て控除額を算出するのは負担が大きすぎますので、そのようになっているのでしょう。2年目以降は税務署から申告書も送られきて、比較的簡単にできますので、年末調整で住宅ローン控除が受けられることになっています。
(2020年12月1日)
セルフメディケーション税制について
確定申告の時期も近付いてきましたが、今回はセルフメディケーション税制についてのミニコラムになります。
医療費控除の特例として平成29年から設けられたのが、「セルフメディケーション税制」でして、従来からの医療費控除と同様に確定申告をする必要があります。年末調整では控除できません。また、従来からある医療費控除との選択適用になり、重複して受けることはできません。
制度の内容としては、薬局などで売られている「特定一般用医薬品等購入費」を支払った場合に控除が受けられる制度です。薬局に行きますと、「セルフメディケーション税控除対象」と薬の箱などに記載されていますので、こちらの対象医薬品を購入した場合に控除が受けられる制度です。
この制度を受けるためには、健康診断などを受けていること、予防接種を受けていることなどが要件(一定の取組といいます)になります。
計算方法は、「実際に支払った医薬品の購入費-12,000円(最高88,000円)」で計算した金額が控除額となります。
従来からの医療費控除ですと、基本的には年間通して10万円以上の医療費がないと控除の対象にはなりませんが、こちらの制度は、年間で医薬品を12,000円(月換算で1,000円)以上購入しますと、控除の対象になりますので、金額的にはハードルがかなり低く設定されているように思います。但し、セルフメディケーション税制ですと、対象医薬品以外は対象になりませんので、例えば、お医者さんにかかった費用は対象にはできませんし、上記の一定の取組(予防接種など)にかかった費用も控除できませんのでご注意ください。
確定申告の際には、領収書が必要になりますが、対象になりそうな方は是非確定申告して控除を受けましょう。
(2020年12月1日)
週二回以上発行される新聞~消費税の軽減税率適用
令和元年10月から消費税率が10%となりましたが、その際、「酒類・外食を除く飲食料品」と「週二回以上発行される新聞(定期購読契約に基づくもの)」が軽減税率適用となり、増税前の8%に据え置かれることになりました。飲食料品は衣食住の要ですので、軽減税率となるのも納得できますが、新聞は腑に落ちないと思われている方も多いでしょう。なぜ軽減税率が適用されているのか理解できません。「政治、経済、社会、文化等に関する一般的事実を掲載するもの」が対象になっており、スポーツ新聞も軽減税率の対象になります。衣食住に直結する「水道代、電気代、ガス代」などの方が優先順位は高いように思えて仕方ありません。
コンビニや駅で購入する新聞や、電子版の新聞は軽減税率の対象とはならず、10%が適用されます。紙の新聞と電子版の新聞のセット販売の場合には、それぞれに区分して、それぞれの税率が適用されます。
(2020年12月1日)
通勤手当の源泉所得税と社会保険の取扱いの違いについて
通勤手当(通勤交通費)の源泉所得税と社会保険の取扱いに違いがあるのはご存知でしょうか。その点についてミニコラムになります。
まず、税法上、源泉所得税での通勤手当の取扱いですが、電車・バス等の場合、1カ月あたり15万円以下が限度額となりますが、「通勤のための運賃・距離・時間等の事情に照らして、最も合理的な経路及び方法で通勤した場合の通勤定期券など金額」は非課税となります。
次に、社会保険(労働保険含む)では、通勤手当は、報酬に含むとされています。
算定基礎や、労働保険の申告の際には、通勤手当を入れて計算しないと間違いですので、注意が必要です。
今回のミニコラムで数字を用いて考えたいのは、下記の事例になります。会社は関内駅近くにあるとします。給与は2人とも30万円です。年齢は30代、扶養は無しとします。
Aさん 自宅徒歩圏内に在住 通勤手当0円
Bさん 静岡駅近くに在住 1カ月の定期代130,520円 定期券の支給をうけている
上記の前提で、社会保険がいくらの手取りになるかを考えていきます。
Aさん 30万円-健康保険料14895円-厚生年金保険料27450円-源泉所得税6850円=250,805円
(Aさんの報酬月額30万円)
Bさん 30万円-健康保険料21846円-厚生年金保険料40,260円-源泉所得税6,110円=231,784円
(Bさんの報酬月額430,520円)
となり、AさんとBさんで手取り額に19,021円の差があることになります。年間にすると228,252円の差になります。終身雇用の時代ではないですが、仮に大学新卒から65歳まで会社に勤務したとすると43年間で9,814,836円の差になります。
給与額は同じ30万円にもかかわらず、手取額にこれだけの差が出ることには違和感を感じてしまいます。
仮に、Cさんが勤める会社では、通勤手当を支給しておらず、自腹で静岡から通勤していたとしたら、どうでしょうか。BさんとCさんと比較したら、通勤手当を受けている分、社会保険料が高くなるのは仕方ないと考えられなくはありません。
いずれにしても、税金上と社会保険上で取り扱いが異なっていることで混乱を生んでいるのは間違いありません。
(2020年11月30日)
当ブログは専門的な内容を分かりやすくするため、詳細な部分は省略しております。
当ブログを利用されて生じたいかなる損害についても、当事務所は賠償責任を負いませんので、ご判断に迷われた場合には、事前に直接ご連絡頂くようお願い致します。
田辺税理士事務所
からのお知らせ
- 新規顧問先様の受付につきまして
(2024年10月22日) - 新規求人(従業員の採用募集)は停止しております
(2024年9月30日) - 法人様・個人事業主様向け個別無料相談会
(2024年7月7日) - 令和5年分確定申告のご依頼【インボイスのご相談可】
(2023年11月2日) - 決算料値引きキャンペーン
(2023年3月22日) - インボイス制度について
(2022年7月3日) - 事業復活支援金について【申請期限延長】
(2022年5月20日) - 個人確定申告新規ご依頼の件
(2022年2月3日) - 贈与税について
(2021年10月9日) - 相続税計算のポイント
(2021年10月2日)